人獣共通感染症 連続講座 第70回追加
オーストラリアで見いだされたコウモリ由来の新しいウイルス
霊長類フォーラム 人獣共通感染症(第70回追加)12/21/98
 
 オオコウモリから分離された新しい狂犬病類似ウイルスであるバリナウイルスにつ
いて、その後ProMEDに新しい情報や訂正がいくつか載せられています。ご覧になった
人も多いかと思いますが、それらの主なものをご紹介します。
- バリナウイルスの名前の由来:
 バリナは最初の患者が感染した場所になっていましたが、これはあやまりで、実際は、最初にウイルスが分離されたオオコウモリが捕獲された場所の名前とのこと。
ノーザンテリトリー州の獣医衛生局長からの指摘です。また、ProMEDの司会者チャールス・カリシャーは、この名前が一番妥当と考えたので、これを用いているのであって、自分が命名したのではないと述べています。
 - 危篤状態の患者:
 2年前に感染した母親のことですが、彼女は日曜日(12月13日)に死亡したそうです。これで2名の死亡者が出たことになります。彼女は咬まれた後、狂犬病ワクチンの接種を勧められたが断ったと伝えられており、そこでオーストラリアのマスコミは狂犬病ワクチンの接種を広範囲に行うようにといった過熱報道をしているそうです。カリシャーのところにもマスコミなどからの取材がいくつも来たとのことです。
 - オオコウモリとオーストラリア国民:
 オオコウモリの赤ん坊に母乳を与えている人がいるという話は聞いたことがないというメールが掲載されています。オーストラリア国民がエキセントリックな平等主義の哺乳動物というイメージを与えるだけだと。
 今回死亡した患者をおそったオオコウモリは最初は鉛中毒と誤診されていたもので
、都市部に生息するオオコウモリの羽などに鉛の汚染が見られることは珍しくないそ
うです。
 また、メルボルンやシドニーでは植物園は郊外ではなく、街の中心にあり、したが
って街の中心にオオコウモリが生息しているとの指摘もあります。オーストラリア国
民が皆オオコウモリを愛しているのではなく、多くの人はオオコウモリがいなければ
、街はもっと静かできれいになるし、裏庭の果物も実ると思っている、という意見も
掲載されています。
 
Kazuya Yamanouchi (山内一也)
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