人獣共通感染症 連続講座第75回追加br>
ニパウイルス:マレーシアのヘンドラ様ウイルスの新しい名前
霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第75回追加)4/11/99
4月11日付けのProMEDにヘンドラ様ウイルスに名前が付けられたとのニュースが
出ていました。お読みになった方も多いと思いますが、先日の講座の追加としてお知
らせします。
名前はニパNipahウイルス。これは先日この講座でご紹介したDr.Chua Kaw Bingチュ
ア・コー・ビンが、最初にウイルスを分離した場所、Kampung Baru Sungai Nipahバル・スンガイ・ニパ村の名前にちなんだとのことです。これからはヘンドラ様ウイ
ルスというおかしな名前ではなく、ニパウイルスということになります。分類上はパ
ラミクソウイルス科ですが、属は前回の講座に書いたように、モービリウイルス属と
は考えられないので、どうなるかまだ分かりません。
4月10日のジャパンタイムスによれば、これまでに247名が発病、117名が
死亡と報道されています。現地での検査の結果、88名の犠牲者はニパウイルスに感
染しており、11名はニパウイルスと日本脳炎の両方が陽性だったとのことです。
これまでは人からのウイルス分離だけで、ブタの感染のはっきりした証拠は伝えら
れていませんでした。しかし、現地に派遣されているCDCの研究者からの報告で、ブタでの感染の証拠も明らかになりました。非公式ですが、4月初めまでに10頭のブ
タを検査した結果、すくなくとも4頭でニパウイルスの抗原が見つかっています。大
部分は肺炎が主体で、それに細菌の2次感染を伴っているようです。4頭のうち3頭
では気管の上皮細胞に大量のニパウイルス抗原が見つかっており、もう1頭では病理
学的に髄膜炎の病変があり、中枢神経系にウイルス抗原が見つかっています。
このウイルスの自然宿主はいまだに不明ですが、オーストラリアのヘンドラウイル
スではオオコウモリであったことから、マレーシアでもオオコウモリが疑われていま
す。現在、CDCとオーストラリアの研究者が調査をしています。マレーシアでは石灰岩の洞窟などにもオオコウモリが生息しているそうです。
Kazuya Yamanouchi (山内一也)
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